カレーって楽しい

 このあいだ、引っ越しのときに親が手伝いに来てくれた。手伝いどころか、自前のトラックに冷蔵庫や洗濯機含む荷物や家具を全て積んで運んでくれた。人生であれほど親が頼もしかったことはない(ありがとうございました!!)

 その道中、母とカレーの話になった。母は、カルディでカレーの粉のセットが売っていて、最近はそれで作っているのだと言った。わたしはふんふんと興味深く話を聞きつつ、ドライカレーがうまくドライにならずかたまってしまうとか、やけに味が濃くなるだとか、カレーの最後の煮込みをさぼったせいで水が多くなってしまったとか、そんな相談をした。適切なアドバイスらしきアドバイスはなかったが、母にもドライカレーは難しいと教えてくれた。難しいと言いながら、母のドライカレーはふつうに美味しいのだけれど。

 途中で父が口をはさみ、最近はカレーばかりな気がすると言った。ここ一ヶ月ほど、母は毎週末ライブに行っていて、その日は毎回カレーだそうなのだ。

 カレー楽しいもん、と母は笑った。私も同意した。カレーは楽しい。具や調味料のバリエーションが幅広くて、楽しみの余地が大きい食べものだと思う。そういう理屈っぽいこと抜きにしても、カレーというものは、なにか光をひめる食べ物だと感じる。

 リトルフォレストという映画があって、その中で、主人公と口喧嘩をした友人が仲直りのときに鍋にカレーをつくって鍋ごと持ってきて、いっしょに食べるというシーンがある。あのカレーを、わたしはとても特別に思った。

 喧嘩した友達のことを想いながら作るカレーってどんな味だろう。きっととてもおいしいよね。言い過ぎたよな、ゆるしてくれるかな、なんて言おうかな、そう考えながら野菜を切って、鍋に入れて、煮て。においや音、心の動きや落ち着きが、ない記憶をなぞるように脳にあふれた。

 特別なときもふつうなときもカレーはおいしい。わたしが作ったなんの変哲もないカレーを、いつかまた誰かが食べるのでしょう。

 

 優しいカレーを作る手を、持ちつづけたいです。